▲宮城県内最古の酒蔵。
宮城県の中央に位置し、仙台市の北部副都心泉区に接している富谷町は、江戸時代、奥州街道の宿場として伊達政宗によって開かれました。仙台藩領土の南北を結ぶ奥州街道の要駅として、七北田・吉岡宿駅の中間に置かれた宿駅として栄えた「富谷新町」の雰囲気を今に伝える富谷町中心部の旧奥羽街道沿いに現役の酒蔵としては県内最古の内ヶ崎酒造店があります。
かつての宿場町として栄えた「富谷町」は、今や整然とした団地群に囲まれ、仙台のベッドタウンとなっています。「富谷」の由来は、むかしこの地に「十のお宮」があったことから「とみや」となったと言われています。現在では「日吉神社」のみが残っています。
内ヶ崎酒造の沿革
寛文元年創業。(1661年)
内ヶ崎家は、戦前衆議院副議長を務めた作三郎氏、元東北電力社長の贇五郎氏ら県を代表する人材のほか、町長、県会議員を輩出した富谷一の名家で、その道のりは町そのものの歴史と重なります。
内ヶ崎家の初代・織部(前名・筑後)は、室町時代の黒川郡一帯を治めていた黒川氏に仕えた家老です。1590年(天正18年)、黒川氏が伊達政宗に敗れ家臣は離散、織部も農業に従事しながら閑居していましたが、1615年の「大阪夏の陣」で徳川幕府体制が確立すると、藩内の街道整備に力を入れ始めた政宗の命を受けて、富谷での宿場開設に尽力し町を治める初代「検断」にも任命され、当時13戸しかなかった寒村をわずか2年で宿場町へと変貌させました。
以降、代々内ヶ崎家は参勤交代をする奥州諸藩や松前藩の大名の宿泊所となる「本陣」も務めたことから、街道沿いは旅人で賑わい江戸後期には約80軒の店が並ぶ商人の町へと発展しました。
2代目の作右衛門の時に、仙台藩主から酒の醸造を許され酒造りが始まりました。仙台藩の儒学者・志村五城が残した碑文には「自ら作った稲で酒を醸造、その味は極めて甘味」と記されています。
1812年(文化九年)には、十代藩主伊達斉宗に献酒し、翌年には「初霜」と「初霞」の銘を賜るなど藩を代表する酒へと成長しました。藩に金や穀物を献上して藩政に協力することもしばしばで、地域住民の多くを雇い入れるなど、救民の志も厚かったとされています。1904年(明治37年)には救済事業として町内の所有地に庭園を築造、主だった産業のなかった富谷で雇用創出を図りました、内ヶ崎家別邸庭園は今では町の観光名所の1つとなっています。
鳳陽の銘柄は、「唐書」の季善感伝に”鳳鳴朝陽”とあり、その鳳にあやかり家運の隆昌を念願して命名されました。
これまで多くの鑑評会において数々の好成績をおさめております。
昭和59年(1984) 全国新酒鑑評会金賞 |
平成 2年(1990) 南部杜氏自醸清酒鑑評会岩手県知事賞 |
昭和60年(1985) 全国新酒鑑評会金賞 |
平成 5年(1993) 全国新酒鑑評会金賞 |
昭和60年(1985) 南部杜氏自醸清酒鑑評会花巻市長賞 |
平成 6年(1994) 全国新酒鑑評会金賞 |
昭和62年(1987) 全国新酒鑑評会金賞 |
平成 8年(1996) 全国新酒鑑評会金賞 |
昭和62年(1987) 南部杜氏自醸清酒鑑評会花巻市長賞 |
平成11年(1999) 全国新酒鑑評会金賞 |
昭和63年(1988) 全国新酒鑑評会金賞 |
平成12年(2000) 東北六県鑑評会仙台国税局長賞 |
平成 元年(1989) 南部杜氏自 南部杜氏組合中央会長賞 |
平成13年(2001) 全国新酒鑑評会金賞 |
南部杜氏鑑評会35回連続優等賞
内ヶ崎社長の今も生きる共栄の心
内ヶ崎酒造店は、1661年の創業以来、一貫して手づくりの酒にこだわり、守り続けてまいりました。歴代優秀な杜氏にも恵まれ、量を求めず、妥協を許さない酒造りが、鑑評会での数々受賞歴となって輝いています。
内ヶ崎社長は、家業を継がれる前は、エンジニアをやっておられました。そのためコンピューターにも詳しく、地酒を親しむ会宮城を立ち上げ時から貴重なアドバイスを頂きました。特にその人柄は、温厚で物静かな中に、妥協を許さない厳しさと、優しさがあります。
「造り酒屋として社員にはいつも『お客様が友と一緒に楽しみながら飲める酒、酒の肴が一層おいしくなる酒を造ろう』と云っています。」
「造りについて吟醸酒から本醸造まで共通しているのは、鳳陽の味を出すことです。吟醸は、米をギリギリまで削らず精米歩合も40%程度までに押さえ、旨味を出させ、味を引き立たせます。淡麗ながらもしっかりした鳳陽の味を出すことにこだわっています。純米酒や本醸造の造りの中でも鳳陽の味を守るため、炭素濾過作業での炭の使い方も控えめにし、酒本来の旨味を残すようにしています。現在造りの量が増えていますが、味を下げないこと、味を守るよう徹底しています。」
「今の夏場、特におすすめは、本醸造原酒のひやです。酒質は淡麗ながらしっかりした味があるためロックでも美味しく召し上がれます。そして9月からは、寒仕込みでしぼられたお酒が夏を越し、ゆっくりと熟成されおいしくなった本醸造原酒「秋あがり」が販売されます。原酒のためアルコール19度〜20度と高く、軽く冷やしてお飲みいただければ格別です。」
「うちは、近代的な設備も少なく、昔ながらの手造りで酒造りをしています。基本的には長年うち一筋で頑張っている及川杜氏にまかせています。私の主な仕事は売ることへのチャレンジなんです。先のサッカーワールドカップではイタリアチーム仙台キャンプを後援するためのアズーリラベルの地酒を当社で造りました。仙台名店ドットコムに出店しているイーストファームみやぎの栄週米を原料とした地酒も造っています。栄週米の酒は、米がしっかりしていて粒が大きいため麹菌の破精込みが良く、吟醸香のある本当においしい酒が出来ました。」と社長は語る。
昔を振り返って、内ヶ崎社長は「冬の酒を仕込む忙しい時期には、近隣の農家の人々に米運びなど蔵の仕事を手伝っていただきました。内ケ崎酒造店の最大の消費者である近隣の農家や町民の方々と内ケ崎家が互いに助け合いながら発展してきました。現在、住民の中で新しく富谷に来た人が多くなり、町としてのまとまりがなくなっていますが、新しい住民とも地元の酒を酌み交わし、酒を核に町民同士のつながりを深め、酒で町の活性化に役立てたい。」と話す。
昨年は、町主催のスタンプラリーや蔵内でのライブコンサートなどに快く会場を提供し、家族総出でかき氷の販売を手伝うなど、蔵が町民交流の場として活用されています。
町の発展を願い、昔ながらの酒造りにこだわり続ける内ヶ崎家の精神は今も生き続けています。
▲櫂入れ風景…昔ながらの酒造り作業。
▲蒸しで使っている和釜です。
▲シーンと静まりかえっている造り蔵。